所 感(令和2年度秋季期セミナー時の挨拶で)

 トンネル屋のこれまでの歴史・文化は、一日の出来高、毎月の出来高を多く上げるために、一日24時間仕事をしてきたといっても過言ではありません。
 毎日の昼食はメシを噛み噛み(15分くらいの昼食時間で食べたらすぐに仕事に向かう)、休憩時間などとったこともなく、朝7時から夜7時まで、夜勤は夜7時から朝7時まで、交代番が来るまで仕事をしてきました。毎日11〜12時間働いて出来高を上げ、家族に少しでも多くの仕送りをしたいという強い思いで出稼ぎに来ている人が多い職種です。
 近年は、地元から出たくない人が増えたように思いますが、地元に仕事がなくなると出稼ぎに行かなくてはならなくなり、家族の元に1年に3回(盆、正月、5月連休)帰るだけの生活になる。そのため毎日毎日出来高を上げ、家族に仕送りをしたいという強い思いがあるため、身を粉にして働いている人が多数です。トンネル屋になる人のほとんどが、明かりの仕事、地元の仕事(建設業他)に比べ稼ぎがよいからトンネル屋になるのだと思います。
 日本も豊かになり、生活環境、子供の教育事情、社会の変化とともに、これまでのトンネル屋の考え方も変わり、こういった変化とともに、トンネル屋への入職はますます減少し、担い手が少なくなっていることは事実です。
 現在、働き方改革という国の施策により若干の変化はあるかもしれませんが、トンネル工事業界の専門業者は、少しずつ廃業または倒産が増えてきています。
 その背景には、人手不足はもとより、一生懸命努力して出来高を上げ会社を切り盛りしようとして頑張っても、その頑張った歩掛り(データ)を基に、さらに厳しい積算単価での受注を求められる。企業努力をすればするほど、自分で自分の首を絞めることになるという悪循環があります。このままではトンネル専門工事業者は衰退していくだけです。
 トンネル工事業界の発展のためにも、若者がトンネルに魅力を感じるようにすることが大切であり、そのためには、機械化も大変重要ですが、働く時間と月の日数の実態を発注者が認識し、本当の歩掛を知っていただき、正確な歩掛によって積算していただきたいと思います。コロナウイルスの影響で仕事の取り合いになり、競争の世界になり、価格の時代になりそうな予感がします。そうなると担い手はますますトンネル業界に入ってこなくなるのではないかと大変心配しています。
 トンネル専門工事業者は、30年前は100社以上ありましたが、今は、年間を通して施工している専門工事業者は約30社しか残っていません。
 トンネル専門工事業界を、安全な環境で、魅力あるものとするのが私の願いです。

一般社団法人 日本トンネル専門工事業協会
会   長   野ア  正和