2026年9月30日
ブランドは大企業だけのもの? トンネル工事会社にも必要なブランドの話【前編】

「大手企業は、知名度やブランド力があるから」
中小企業の経営者と話していると、こんな言葉をよく耳にします。確かに、大手企業には多くの人が知っている社名や商品があり、長い時間と予算をかけてブランドを育ててきた会社もあります。
ただ、その言葉の裏に「自分たちには関係のない話だ」という思い込みがないでしょうか。
ブランドと聞くと、高級なバッグや時計を思い浮かべる人も多いと思います。土木・建設業、とりわけトンネル専門工事会社には縁遠い言葉に感じるかもしれません。
でも、本当にそうなのでしょうか。
こんにちは。広告業界出身の土木偏愛者、おがしんです。
今回は前後編の2回に分けて、トンネル工事会社にとってのブランドを考えてみたいと思います。
知名度よりも「どう思われているか」
知名度とブランドは、必ずしも同じものではありません。
知名度は、簡単に言えば「どれくらい多くの人に知られているか」。一方、ブランドを考えるときには、「どのような会社として知られているか」という視点が必要です。
全国的には名前を知られていなくても、元請会社から「あの会社なら安心して相談できる」と思われている。協力会社から「あの会社とは一緒に仕事をしやすい」と評価されている。求職者から「働くなら、あの会社がいい」と思われている。
もし、そんな認識が周囲にあるなら、それも立派なブランドではないでしょうか。
トンネル専門工事会社の場合、仕事の現場が各地にある会社もあります。ですから、地元で有名になることだけを目指せばよいわけでもありません。
元請会社、協力会社、現場で関わる人たち、そしてこれから一緒に働いてほしい人たち。自社が事業を続けていくうえで、信頼を得たい相手は誰なのか。その相手にどう認識されているかを考える方が、現実的だと思います。
全国の誰もが知っている会社になる必要はありません。必要な相手の中で、相談先や就職先として思い浮かべてもらえる。それは会社の規模にかかわらず、目指せる状態です。
ブランドを身近な言葉で考えてみる
ブランドにはさまざまな定義があります。名前やロゴなど、他との違いを見分ける特徴を指すこともあれば、会社の価値観や周囲が持つ印象まで含めて使われることもあります。
一つの日本語に置き換えるのは難しいのですが、私自身は「信用」や「信頼」という言葉が近いと考えています。
その会社らしい特徴が認識され、積み重ねによって信用や信頼へ変わる。そして、何かを選ぶときの納得感や安心感につながっていく。
例えば、「安全について丁寧に考える会社」「現場での連携を大切にする会社」「若手の成長を支える会社」といった特徴です。
会社の名前を聞いたとき、相手の中にこうした印象が浮かび、「あの会社なら」と判断する理由になる。それが、私の考えるブランドに近いものです。
ただ、会社側が「安全を大切にしています」「社員を大切にしています」と宣言すれば、そう思ってもらえるわけではありません。
発信している内容と、現場での判断や社員への接し方が違えば、相手はそのズレを感じます。採用サイトでは人を大切にしているように見えても、実際の社員がそう感じていなければ、言葉の説得力は弱くなってしまいます。
最終的に評価するのは、会社の周囲にいる人たちです。
ロゴは会社を覚えてもらう助けになりますが、そのロゴを見たときに何を感じるかは、相手が得てきた情報や経験によって変わります。だから、見せ方を整えるだけでブランドが完成するわけではないのです。
出発点は「どんな会社でありたいか」
相手が評価するのなら、会社側は何もできないのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。
出発点には、会社自身の意思が必要です。
自分たちは、どんな会社でありたいのか。トンネル工事を通じて、社会や業界に何ができるのか。取引先にとって、社員にとって、どのような存在でありたいのか。
その思いが整理されていれば、日々の判断や行動に一本の軸が生まれます。そして、実際に行っていることを広報によって伝え続けることで、少しずつ周囲の認識が育っていきます。
ブランドが相手の中に形成される印象や信用だとすれば、ブランディングは、目指す姿に向けて行動と発信を積み重ねること。私は、そのように捉えています。
ロゴや広告の変更も、そのための手法の一つです。ただ、その前に「何を大切にする会社なのか」を整理しておきたいところです。
ブランドの価値は、知っている人の多さだけで決まりません。中小企業にも、それぞれの事業や届けたい相手の範囲に応じたブランドが必要です。
あなたの会社は今、元請会社や協力会社、社員、求職者から、どのような会社だと思われているでしょうか。そして、本当はどう思ってもらいたいでしょうか。
まずは、その二つを考えてみてください。
後編では、会社の意思に沿った行動と発信が、どのように共感や信用、信頼へ育っていくのか。ある建設会社の事例を交えながら、ブランドを磨く第一歩を考えます。
それでは本日も、ご安全&ご機嫌に参りましょう♪
記事を書いた人

株式会社ドボクのミカタ 代表取締役 小川慎太郎
防災士/公益社団法人土木学会Web情報誌fromDOBOKU副編集長/一般社団法人行政エンジニア支援機構賛助会員
広告業界にて25年間、マーケティングや販売促進の企画業務に従事。とある土木イベントにアドバイザーとして参画したことがきっかけで、熱烈な土木ファンになる。
土木業界に「広報」という言葉が浸透していない時代から「広報の重要性」を説き続けてきた、土木広報のパイオニア。
近年は、企業、団体向けの併走型コンサルティングサービスを中心に活動している。
公益社団法人土木学会・土木広報大賞2025最優秀賞を受賞
