2026年9月17日
「とりあえずSNS」の前に。AI時代に会社の情報を蓄積するということ

広報について相談を受けていると、よく聞く言葉があります。
「とりあえずInstagramを始めたいんです」
もちろん、SNSを始めることが悪いわけではありません。何も発信しないより、まず一歩を踏み出す方がいい。現場の様子や社員の表情を知ってもらう入口として、SNSはとても有効です。
ただ、SNSを始めることと、広報に取り組むことは、まったく同じではありません。
特にこれからは、日々の投稿と同時に、会社独自の情報をWeb上へ蓄積していくことが、これまで以上に必要になると考えています。
こんにちは。広告業界出身の土木偏愛者、土木広報コンサルタントのおがしんです。
SNSは入口、蓄積された情報は判断材料
SNSは、新しい投稿が次々と流れていく場所です。会社を知ってもらい、「ちょっと気になる」と思ってもらうきっかけづくりには向いています。
一方、就職や転職を考えている人が、SNSの投稿だけで応募を決めるとは限りません。
トンネル工事とは、具体的にどのような仕事なのか。どんな技術が身につくのか。安全に対して、どのような考え方を持っているのか。現場ではどんな人たちが働き、どのような生活を送っているのか。
本人だけでなく、進路を一緒に考える家族も、こうした情報を知りたいはずです。仕事を依頼する側にとっても、実績だけでなく、仕事への姿勢や技術者の人柄は大切な判断材料になります。
そこで必要になるのが、コーポレートサイト、採用サイト、ブログ、動画などに蓄積された情報です。
ここでいう「ストック型情報」とは、単に媒体の種類を指すものではありません。検索などを通じて後から見つけてもらい、会社や仕事を理解する材料として長く参照される情報のことです。動画も、公開する場所や整理の仕方によって、流れていく情報にも、蓄積される情報にもなります。
AIが会社を探す時代に、何を残しておくか
これからは、人が検索結果を一つずつ見比べるだけではなく、AIに条件を伝えて、会社や仕事を探してもらう場面が増えていくでしょう。
例えば、「専門技術を身につけられる建設会社を探して」「若手を育てているトンネル工事会社を教えて」とAIに尋ねる人が出てくるかもしれません。
そのとき、Web上に情報がほとんどなければ、AIはその会社について十分に理解できません。情報が少なければ、本来持っている価値まで伝わらない。掲載されている内容が古ければ、現在とは違う会社の姿が伝わってしまう可能性もあります。
ブログや動画を公開すれば、必ずAIに紹介されるわけではありません。それでも、AIにも人にも会社を正しく理解してもらうには、そのための材料を用意しておく必要があります。
「伝わらなければ、存在しないのと同じ」という広報の原則が、AI時代にはさらに現実的になってきたと感じます。
トンネル工事には、残すべき一次情報がたくさんある
トンネル工事の現場には、その会社にしか語れない情報がたくさんあります。
厳しい条件の中で、どのように安全を守っているのか。チームで仕事を進めるうえで、何を大切にしているのか。若手技術者がどのように経験を積み、成長してきたのか。現場で起きた課題に、どのような判断で向き合ったのか。
こうした経験や考え方は、他社が代わりに語れるものではありません。実際に現場に立つ人の言葉だからこそ、会社独自の一次情報になります。
AIを使えば、一般的できれいな文章は簡単に作れるようになりました。だからこそ、どの会社にも当てはまる言葉ではなく、社長や技術者、現場で働く皆さんの具体的な経験を残すことに価値があります。
まずは社長インタビューから始めてみる
すべての媒体を一度に整える必要はありません。最初の一歩としておすすめしたいのは、社長インタビューです。
会社がどこへ向かおうとしているのか。仕事に対してどのような姿勢を持っているのか。若手に何を期待し、どのように育てたいのか。まずは、そうしたことを社長自身の言葉で語ってもらいます。
その内容を動画にしてもいいですし、ブログ記事にまとめても構いません。動画で話した内容を記事にし、その一部をSNSで紹介すれば、一度の取材から複数の発信へ展開できます。
僕の会社でも、2〜3年前に公開したブログや動画が今も見られ、仕事の相談や依頼につながっています。公開直後の反応だけでは、その情報の価値は分かりません。必要としている人が数年後に見つけてくれることもあります。
SNSで興味を持ってもらい、詳しい記事や動画で仕事への理解を深めてもらう。その情報を少しずつ蓄積し、数年後にも会社の代わりに働いてくれる資産へ育てていく。
AI時代の広報で考えたいのは、投稿の回数だけではありません。
今、AIや求職者が皆さんの会社について調べたとき、トンネル工事への思いや、働く人たちの姿まで知ることができるでしょうか。
もし、まだ十分な情報がなければ、まずは一本のインタビューから始めてみてはいかがでしょうか。
それでは本日も、ご安全&ご機嫌に参りましょう♪
記事を書いた人

株式会社ドボクのミカタ 代表取締役 小川慎太郎
防災士/公益社団法人土木学会Web情報誌fromDOBOKU副編集長/一般社団法人行政エンジニア支援機構賛助会員
広告業界にて25年間、マーケティングや販売促進の企画業務に従事。とある土木イベントにアドバイザーとして参画したことがきっかけで、熱烈な土木ファンになる。
土木業界に「広報」という言葉が浸透していない時代から「広報の重要性」を説き続けてきた、土木広報のパイオニア。
近年は、企業、団体向けの併走型コンサルティングサービスを中心に活動している。
公益社団法人土木学会・土木広報大賞2025最優秀賞を受賞
