2026年10月13日
【記者コラム第1回】山岳トンネルができるまで
道路や鉄道のトンネルは、どうやってつくるの?
NATM・発破工法で施工する山岳トンネル工事の施工手順を紹介します。
- 削孔(さっこう)
ドリルジャンボという機械を使い、岩盤(「切羽(きりは)」という)に爆薬を入れる小さな穴をたくさん掘ります。
- 装薬(そうやく)
穿孔した孔(あな)の中に爆薬を詰めます。
- 発破(はっぱ)
爆薬に点火。爆発させて岩盤を砕きます。
- 土砂(ズリ)処理
砕いた岩や土砂(ズリ)をホイールローダーでダンプトラックに積み込み、トンネルの外に運び出します。
坑外への搬出にはベルトコンベヤーを使うこともあります。
- コンクリート吹き付け(1次)
掘ったトンネルの岩盤面にコンクリートを吹き付けて補強します。
- 支保工(しほこう)設置
トンネルが崩れないよう支保工(トンネル内部を支えるアーチ状の鉄骨)を設置します。
- コンクリート吹き付け(2次)
設置した支保工と一つ前に設置した支保工との間の地山(壁面)に再びコンクリートを吹き付けます。
吹き付けたコンクリートを含め壁面の厚さは5~15cmほどになります。
- ロックボルトの打設
コンクリートを吹き付けた支保工と支保工の間にロックボルト(3~4mの鉄筋)をトンネルの内側から放射状に打って補強します。
ここまでのサイクルを貫通まで繰り返し、トンネルを掘り進めます。
- インバート施工
掘削後の地山の安定と変形を抑制するため、早期にトンネル断面を閉合するインバートを施工します。
一般的な施工は、掘削→インバート桟橋の設置→鉄筋組立・型枠セット→コンクリート打設・養生の手順で進行します。 - 防水工
吹き付けコンクリート面に防水シートを張り、トンネル内への水漏れを防ぎます。
- コンクリート覆工(ふっこう)
防水シート面の内側にコンクリートの移動式鋼製型枠(セントル)を設置し、そのすき間をコンクリートで埋めます。
コンクリートが固まったら型枠を移動します。
トンネルを作る人たちは何人ぐらいで、どんな仕事をするの?
1 山岳トンネル工事の現場で働く人たちの組織と役割
山岳トンネル工事は、掘削や覆工コンクリートなど主たる工事をトンネル専門工事業者がほぼ1社で元請企業から受注し、施工しています。では、トンネル専門工事業者はどのような組織体制で施工し、各組織(施工管理、各班など)はどのような役割を担っているのでしょうか。
下に示した組織図はトンネル専門工事業者の一般的な現場の組織体制を示したものです。現場の最高責任者となる作業所長(現場代理人)をはじめ、主任技術者、安全衛生責任者といった施工管理を担う社員が配置されます。施工管理部隊の下に実際に現場の第一線で作業を行う掘削、覆工、共通工(資材・機械管理)等の各班が設置されます。標準的な山岳トンネル現場でのトンネル専門工事業者の作業員数は、合計35~40人規模で構成され、実作業を行う各班は、作業長(世話役)、班長、そして技能者(トンネル特殊工)という階層構造となります。主な班構成と業務内容を説明します。

- 施工管理
元請企業(ゼネコン)との調整や、施工全般・品質の管理、安全対策などを行うのが作業所長や主任技術者、安全衛生責任者らの施工管理社員です。作業所長は現場代理人とも呼ばれ、トンネル専門工事業者の現場の代表者となります。20年以上の現場管理経験が求められ、会社の中では部長・次長クラスとなります。作業所長の下で現場の施工状況や安全管理などを指導・判断するのが主任技術者や安全衛生責任者らの施工管理社員です。さらに事務担当者らも配置され、現場の書類作成・原価管理・労務管理などの事務管理業務を行います。 - 掘削班(切羽班)
1班5~7人で構成されます。山岳トンネル工事は通常、昼夜2交代作業となるため、掘削班は2班となるのが一般的です。作業内容はドリルジャンボによる穿孔⇒装薬⇒発破または地山切削機械による掘削、掘削後の土砂(ズリ)の搬出、コンクリート吹き付け、ロックボルト設置まで、掘削の最前線における一連の作業を一貫して担当します。
ドリルジャンボに乗り、トンネル切羽に削孔作業を行う掘削班 - インバート班・防水シート班・覆工班
掘削後の後方で作業する部隊となります。インバート工(掘削・コンクリート)が4~5人、防水シート工が2~3人、覆工コンクリート工が5~6人の3班で構成されます。これらの作業は通常、合計10~15人程度で構成されます。
インバート(アーチ構造のトンネル底部)を施工するインバート班 
山岳トンネル坑内に水が出てこないように防水シートを張る 
覆工班によるアーチコンクリートの仕上がり状況 -
共通工班・プラント班
4~5人で構成します。昼夜2交代での掘削作業を行う場合は2班が必要となります。主な業務は吹き付けコンクリートを製造するバッチャープラントの管理、現場から排出される濁水を処理する濁水プラントの管理、機械や電気設備の整備、場内整備、資材搬入・管理などの後方支援の業務全般を担います。 - 火薬係
発破作業のある現場では、火薬類取扱保安責任者または発破技士の資格を持つ火薬専従員を配置し、火薬の加工と管理を行います。通常、掘削班に火薬係も入り、掘削班には火薬類の取り扱いに関する資格(火薬類取扱保安責任者または発破技士)を持つ者が配置されます。各班をまとめる作業長(技術長)は20年以上、各班長は10年以上の現場経験が目安とされています。こうした役職に就くには、ずい道等掘削作業主任者・ずい道等覆工作業主任者など関連資格の保有が不可欠となります。
2 トンネル工事現場で働く人たちの雇用形態
- 雇用形態
トンネル工事現場で働く人たちの雇用形態を紹介します。トンネル現場で働く人たちは基本的にはトンネル専門工事業者の社員となります。雇用形態は「無期雇用の正社員」と、トンネル工事期間だけの雇用契約を結ぶ「有期雇用の技能者社員」に分かれます。この雇用形態はトンネル専門工事業特有の雇用システムで、どのトンネル専門工事業者も同じです。また、覆工コンクリート等の専門工種の場合、協力会社が請け負うこともあります。施工管理業務を担う作業所長や主任技術者、安全衛生責任者、施工管理社員、事務担当者らはすべてトンネル専門工事業者の無期雇用の正社員です。一方、掘削班をはじめとする各班の技能者はすべて有期雇用の技能者社員となります。技能者のリーダーとなる作業長(技術長)の多くが有期雇用の技能者社員です。無期雇用の正社員は会社規定で定めた月給で、一般的な会社員と変わりませんが、有期雇用の技能者社員は雇用形態が違いますので、詳しく説明します。
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多能工
各班で働くトンネル技能者(トンネル特殊工)は、数種類の重機を操作し、他職種の作業(例えば鉄筋組み立て、型枠製作・組み立て、ガス切断・溶接作業等)もこなせる、いわゆる多能工の資質を持っています。また、ずい道等掘削作業主任者や職長教育、火薬類取扱保安責任者または発破技士などの関連資格を多数保有している技能者もいます。建築工事現場では、職種ごとの業務を各専門工事会社に再委託するのに対し、トンネル工事ではトンネル専門工事業者がすべての職種を行います。このため、トンネル専門工事業者の正社員が各職種の施工管理を担当し、さまざまな職種の業務ができる技能者を有期で直接雇用します。トンネル工事では、こうした有期雇用者が現場要員全体の3分の2以上を占めます。これはトンネル工事の大きな特徴と言えます。 - 給与体系
有期雇用者との雇用契約は現場単位の1年契約が基本となります。給与は出来高に応じた「歩合制の日給・月給制」が多く採用されています。一昔前のように親方が一括で報酬を受け取り分配するのではなく、トンネル専門工事業者が個々の技能者と直接雇用契約を結び、役割、就労時間、出来高などに応じて給与を計算・支払いするため、透明性が確保されています。掘削班などの技能者は昼夜二交代制で、過酷な労働環境の中で仕事をしなければなりませんが、給与は月100万円を超える優秀な技能者も多くいます。 - 採用方法
技能者確保の手段として公募も行われていますが、実態としては「友人・仲間内」「親族」「地元の知人」といった横の人的つながりによる募集が依然として多く、親子2代でトンネル現場で働く人もいます。有期雇用の技能者はプロジェクト単位で現場を渡り歩くため、流動性の高い人材となります。ただ、継続的に同じトンネル専門工事業者の全国の現場で長年にわたり就労している例も多く見受けられます。有期雇用者の中から優秀な技能者はトンネル専門工事業者の正社員に登用されるケースもあり、将来的に作業所長(現場代理人)までキャリアアップする技能者もいます。やる気と実力次第で、いろいろなキャリアを積むことも可能です。
3 社員のキャリアパスと必要な資格
トンネル専門工事業者に所属する正社員(技術者)のキャリア形成について説明します。新入社員は通常、現場の「工事係」からスタートし、「主任」、「係長・課長」、そして次長・部長クラスである「作業所長(現場代理人)」へと昇進していきます。こうしたキャリアパスを積み重ねていくための標準的な年数やプロセス、その過程で取得が求められる各種資格などについても説明します。
トンネル技術者として入社した正社員は、「工事係」としてキャリアをスタートさせます。先輩社員の指導を受けながら、社会人としての基本的なマナーやトンネル現場の基礎知識、PCの基本操作などを3年程度かけて学びます。その後、現場全体の理解力を高めながら、発破技士や玉掛け・ガス溶接・車両系機械の運転などの技能講習、労働安全衛生法による特別教育などを受け、各種資格の取得も挑戦していきます。
入社5~7年目頃から、現場監督者として必要な知識を身につけます。現場での提案力や適格な指示・伝達力、CAD操作などの経験を積んでいきます。同時に1級または2級土木施工管理技士、ずい道等掘削作業主任者、ずい道等覆工作業主任者、火薬類取扱保安責任者、安全衛生責任者、基幹技能者などの各種の資格を計画的に取得し、主任技術者などの職務経験も積んで、次のステップへの準備を進めます。通常、入社1年目から10~15年程度工事係を務め、係長・課長といった次のステップに進みます。
現場の主要な役職(管理職)に就くためには、相応の経験年数が必要です。係長は約10年以上、課長は15~20年以上の現場経験が一つの目安となります。最終的な目標である作業所長(現場代理人)は、一般的に40歳前後で就任するケースが多く、優秀な人材は35歳前後で抜擢されることもあります。若いうちにさまざまな現場経験を積み重ねていくことで、現場のトップに上り詰めることができます。

4 トンネル工事での元請企業(ゼネコン)とトンネル専門工事業者の役割
山岳トンネルは通常、道路や鉄道などの一部として作られます。工事の発注者はその道路管理者や鉄道事業者で、元請企業(ゼネコン)がまず受注し、トンネル専門工事業者はゼネコンから主にトンネル部分の工事を請け負います。では、ゼネコンとトンネル専門工事業者はトンネル工事を行う上で、どのような役割を担うのでしょうか。
ゼネコンは、発注者との交渉や地元対策、施工計画・管理、品質管理などが主な業務となります。具体的には測量、出来形・工程・安全・品質の管理、主要資機材の調達、対外的な調整、関係省庁に提出する書類作成などを担当します。一方、トンネル専門工事業者は、技能者の確保や一部資機材の調達を行うとともに、現場での具体的な作業手順を提案し、実作業を行います。発注者との設計変更に伴う協議や資料作成は、基本的にゼネコンが行い、トンネル専門工事業者はこれに直接的には関与しませんが、そのための資料作成を手伝います。このように、対外的な交渉はすべてゼネコンが担当し、工事の第一線で施工するトンネル専門工事業者との役割分担は明確に分かれています。
